私は、地元アナング族のアーティスト2人の前であぐらをかいて座りました。彼らはアボリジニのドット・ペインティングを実演してくれました。ドット・ペインティングとは、オーストラリア、ノーザンテリトリーのアボリジニ・アーティストたちを特徴づける、渦巻き状のドットで埋め尽くされた作品のことです。
アーティストたちは、私たちの目の前で土に形を作りながら、それぞれのシンボルが何を表しているかを説明してくれました。渦巻き状の円は「ウォーターホール」や「大切な場所」を意味します。2つの半月形が向かい合って配置され、その横にくぼみが付いているのは、2人の女性が一緒に働いている様子を表し、くぼみは、掘る棒と採集に使う木のボウルを表しています。
私の周りでは、子供たちが私と同じように夢中になって見入っていました。ユララのエアーズロック・リゾート・ビレッジで開催されたマルク(Maruku)のドット・ペインティング体験で、私たちの誰もが、新しい知識と想像力を駆使して、アボリジニのドット・ペインティングを作ろうと意気込んでいました。私たちの背後には、アボリジニやトレス海峡諸島民にとって文化的に重要な存在である永遠の巨石、ウルル(かつてはエアーズロックと呼ばれていた)が遠くにそびえ立っていました。
オーストラリアには、250の言語グループからなるオーストラリアのアボリジニが住んでいます。これらは2つのグループに分かれます。1788年にイギリスが植民地化を開始したときに、既にオーストラリアに住んでいたアボリジニと、現在はクイーンズランド州の一部となっている、トレス海峡諸島出身のアボリジニです。さらに、オーストラリアのアボリジニは、5万年以上も前からオーストラリア大陸に住んでおり、アフリカ以外で暮らす人類最古の集団であるとも言われています。
オーストラリアのノーザンテリトリーの2週間のホストツアーを通して、私は、オーストラリアのアボリジニの多くと交流し、出会い、経験を分かち合うことができました。このような経験の中で、私は、天地創造の物語、ブッシュクラフト、アート、そして植民地化の際に、こうした先住民たちがどう扱われてきたかという、悲劇的な歴史について学びました。
オーストラリアのノーザンテリトリーを訪れるなら、ぜひ体験し、楽しみ、学んでほしい、7つの本格的なアボリジニ体験をご紹介します。
1. グルヤンビ・カルチュラル・クルーズ(Guluyambi Cultural Cruise)
カカドゥ文化ツアー(Kakadu Cultural Tours)
オーストラリア北部のカカドゥ国立公園(Kakadu National Park)にある7,722平方マイルの緑豊かな荒野は、文化と自然の驚異に満ちた世界遺産の地です。湿原には何百万羽もの渡り鳥が飛来し、カカドゥの熱帯雨林、岩だらけの渓谷、ビラボンがあり、川には、世界最古の先住民のロックアートもあります。
公園内には、5,000以上のアボリジニのロックアート・サイトがあります。ビニン族/ムンゴイ族は、およそ6万5,000年前からカカドゥ地域に住んでおり、園内には彼らの古代文化について学べる場所がたくさんあります。
私がカカドゥで最初に訪れたのは、グルヤンビ・カルチュラル・クルーズ(Guluyambi Cultural Cruise)でした。このクルーズでは、現地のアボリジニ・ガイドが、彼らの文化、現地に伝わる神話、ブッシュクラフト(植物や動物の伝統的な利用法)、そしてイースト・アリゲーター川の伝説や生態系などについて教えてくれます。
この少人数制のボート・ツアーは、100%アボリジニが所有し、運営しており、1時間半のツアーでは、イリエワニやこの地域の水鳥を発見し、川のすぐ先にある神聖な土地について学びました。担当してくれたガイドは、この地域の人々が使っていた伝統的な道具や武器を紹介し、彼の民族の文化を語り聞かせてくれたので、私たちは夢中になりました。
専門家向けのヒント:グルヤンビ・カルチュラル・クルーズは、ジャビルからおよそ45分の、アップストリーム・ボート・ランプ(Upstream Boat Ramp)からスタートします。ダーウィンから、アーネム・ハイウェイ(Arnhem Highway)を4時間かけてドライブするなら、ジャビルのすぐ西で、オエンペリ・ロード(Oenpelli Road)を北上してみてください。素晴らしい景色と岩の地層を通り過ぎます。標識に従えば、迷うことはないでしょう。
2. ワラジャン・アボリジニ・カルチャーセンター(Warradjan Aboriginal Cultural Centre)
カカドゥ国立公園(Kakadu National Park)
私のように、カカドゥ国立公園のクーインダ・ロッジ(Cooinda Lodge)に泊まるなら、ロッジから歩いて10分ほどのところにある、ワラジャン・アボリジニ・カルチャーセンターは、訪れる価値がありますよ。このセンターは、無料で一般公開されており、セルフガイド・ツアーが利用できます。この地域のアボリジニの人々による天地創造の物語や、クラップ・スティック(コミュニケーションや音楽制作に使用された棒)、ロックアートのサンプル、織物技術などの遺物が展示されています。
センター内には、アボリジニ・コミュニティが地元で制作したアイテムやアートを販売する大きなギフトショップもあり、また、ミニシアターでは、オーストラリアの文化に関連した映画を数多く取り揃えています。
専門家向けのヒント:カカドゥ滞在中は、イエローウォーター・クルーズ(Yellow Water Cruises)が主催する、イエローウォーター・サンライズ・クルーズ(Yellow Water Sunrise Cruise)をお見逃しなく。すべてのガイドは、カカドゥ・ナレッジ・サーティフィケイトを取得しており、ビニン族がイエローウォーター・ビラボン沿いでどのように暮らしていたかについて、洞察を紹介してくれます。さらに、オーストラリアの日の出は実に壮観ですよ。
3. アリススプリングスの文化アクティビティ
ダーウィンから飛行機ですぐのアリススプリングスは、オーストラリア北部のレッドセンターと呼ばれる場所に位置し、アボリジニの体験が数多くできる都市です。アラルエン文化地区には、アラルエン・アートセンター(Araluen Arts Centre)、ストレロー・リサーチ・センター(Strehlow Research Centre)、中央オーストラリア博物館(Museum of Central Australia)、セントラル・クラフト・スタジオ(Central Craft studio)と小売店があります。
アラルエンのすぐ隣には、オーストラリアの航空史と航空文化に焦点を合わせた、中央オーストラリア航空博物館(Central Australian Aviation Museum)があります。また、テリトリー・アート・トレイル(Territory Arts Trail)では、アボリジニのアーティストや、広大な中央砂漠地域のアートワークを鑑賞することができます。
アリススプリングス滞在中、私は、サンドリフター・サファリ(Sandrifter Safaris)のマクドネル山脈プライベート・ツアーに参加し、イルパルパ山脈やイエパーナイ「キャタピラー」ドリーミングなどの、神聖なスポットに立ち寄ったほか、現地アボリジニのガイド付きで、スタンドリー・チャズム(Standley Chasm)でのハイキングを楽しみました。
4. キングス・キャニオンおよびカルーク・アボリジニ文化的体験ツアー(Aboriginal Cultural Experience Tour)
アリススプリングスとウルル=カタ・ジュタ国立公園(Uluru-Kata Tjuta National Park)の中間に位置するキングス・キャニオンと、オーストラリアのレッドセンターの中心にある象徴的なキングス・キャニオン・リム・ウォーク(Kings Canyon Rim Walk)は、4億年の歳月をかけて形成されました。ここでは、高くそびえ立つ渓谷の壁や緑豊かな淵など、ワイルドでゴージャスな地形を楽しむことができます。
この地は、2万年以上前からルリジャ族とアレンテ族の伝統的な居住地でもあり、カルーク・アボリジニ文化的体験ツアーに参加すれば、彼らの文化や生活様式を肌で感じることができます。ピーターとナターシャの兄妹が主催するこのユニークなツアーでは、中央オーストラリアの地元ルリジャ族とペルタメ族が実演する、1時間の文化的体験を提供します。
武器や道具について学ぶだけでなく、ビジターは、伝統的な食べ物(ウィチェッティ・グラブと呼ばれる丸々としたイモムシなど)について学び、伝統的なビーズやジュエリーの作り方を見たり、ドット・ペインティングやシンボロジーについて学んだり、この地域の神聖なチャントや歌を聞いたりすることができます。
専門家向けのヒント:キングス・キャニオン・リム・ウォークは、この地域で有名なハイキングコースです。このコースでは、渓谷の縁を一周する約4マイルのウォーキングをしますが、その間、渓谷の頂上までで、500段の急な階段を登らなければなりません。梯子や階段があり、起伏のある地形を歩くこのハイキングには、3、4時間を取っておきましょう。このハイキングは、日の出とともに、暑くなりすぎる前に挑むのがベストです。そうすれば、太陽が渓谷に登るのを見ることができます。
5. ウルルツアー・アンド・カルチャーセンター
ウルルは、世界遺産に登録されている公園で、おそらくオーストラリアのアウトバックで最も知名度が高く、有名な場所といえるでしょう。平坦な土地から巨大な一枚岩のようにそびえ立っています。ウルル=カタ・ジュタ国立公園(Uluru-Kata Tjuta National Park)には、この地域のアボリジニ部族の何世紀にもわたる文化的重要性と歴史もあります。
1日でウルルを見て回る最善の方法のひとつは、SEITアウトバック・オーストラリア(SEIT Outback Australia)を利用することです。同社は、伝統的所有者と一緒にウルルを見学するツアーや、ケーブヒルの伝統的なアボリジニの故郷を訪れる日帰りツアーなど、解説付きツアーを専門とする小グループ制のツアー会社です。ウルルのふもとを巡るこの豪華なツアーでは、ムティジュル・ウォーターホール(Mutitjulu Waterhole)などの文化的に重要な場所を訪れ、天地創造の物語を聞きながら古代の岩絵を見学して、アボリジニの人々がこの地域でどのように暮らしていたかを学ぶことができます。
ウルル=カタ・ジュタ国立公園のカルチャーセンターは、アナング族(オーストラリア西部および中央砂漠に住むアボリジニ)とその伝承を称え、理解するための学習の場であり、アナング族とパークレンジャーによる展示や、無料のプレゼンテーションが行われています。アボリジニのアート・ギャラリーも数軒あり、現地のアーティストが常駐しています。
専門家向けのヒント:5月から10月の冬季に行く場合は、厚手のジャケット、帽子、手袋を持参してください。中央オーストラリアのこの地域では、気温は氷点下をはるかに下回ります。
6. マルクのドット・ペインティング体験
最も人気のある体験のひとつは、ユララ・タウン・スクエア(Yulara Town Square)で開催される、地元アナング族のアーティストによる「マルクのドット・ペインティング体験ワークショップ」です。アボリジニの伝統的なドット・ペインティングの手法、使用されるシンボルや道具、そしてドット・ペインティング(1950年代に誕生)が、どのようにして中央オーストラリアのアボリジニを象徴するようになったのか、アーティストたちが解説してくれます。
この体験は、ワークショップを率いる2人の女性の知恵と忍耐のおかげで、私のお気に入りのひとつになりました。
この体験クラスには、小さな子供から70代の方までが参加し、彼女たちの言い伝えをもとに、それぞれの作品を作りました。私たちはピチャンチャチャラ(Pitjantjatjara)の言葉も少し覚えました(ピチャンチャチャラはアナング族が話す現地語)。
マルク・アーツ(Maruku Arts)は、オーストラリアの西部砂漠および中央砂漠のあらゆる場所出身の、900人以上のアナング族のアーティストで構成する集団です。この集団は、30年以上にわたって非営利の工芸企業として、順調に活動を続けています。マルク・アーツは、アナング族が所有し、運営しており、彼らの芸術と文化に、本格的な方法で触れることができるようになっています。
専門家向けのヒント:絵の具を使うので、汚れてもいい服装で臨んでください。また、このクラスは、すぐに満席になることが多いので、早めに予約することをお勧めします。
7. 中央オーストラリア・ギャラリー(Gallery of Central Australia)
ユララのエアーズロック・リゾート地区には、中央オーストラリア・ギャラリーもあり、2021年末にオープンしたばかりです。この共同のアート・ギャラリーは、中央オーストラリアの小規模なアート・コミュニティから先住民たちのコミュニティを集め、彼らの作品、彼らの物語、彼らの文化を紹介しています。
このような小さなアート・コミュニティの中には、中央砂漠や西部砂漠の最も人里離れた地域にあるものもあり、ギャラリーは、アーティストが作品を展示、販売する拠点となっています。ビジターの継続的な支援のおかげで、こうした芸術や文化は、コミュニティはもちろん、それを超えても生き続けているのです。
中央オーストラリアの先住民のアーティストも、GoCAアーティスト・イン・レジデンス(GoCA Artist in Residence)プログラムに参加し、期間中、リゾートに滞在しながら作品を制作、展示、販売しています。
専門家向けのヒント:GoCAは、毎日午前9時から午後5時まで開館しています。エアーズロック・リゾートは、健康、教育、経済、社会参加を通じてアナング族コミュニティに貢献するアナング・コミュニティ財団(Anangu Communities Foundation)も支援しています。これまで、この財団は、100万ドル以上をコミュニティのプロジェクトに寄付してきました。また、エアーズロック・リゾートは、毎年20万ドルを上限に、ゲストからの寄付金と同額を寄付しています。
このリストに掲げているのは、オーストラリアのノーザンテリトリーで楽しめるアボリジニ体験のほんの一部に過ぎず、私が参加したものに限られます。このリストから選ぶにせよ、他の体験を探して挑戦するにせよ、オーストラリアのアボリジニ文化について学ぶことは、オーストラリアの歴史と人々を理解する上で欠かせないことです。
オーストラリアの魅力をもっと知りたい方は、こちらをご覧ください。
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