Skip to main content
TNT002NorthernTerritory 20190520 Uluru Sunset-Viewing MC 18775 1

耳を傾け、尊重し、つながるノーザンテリトリーの文化を理解する

 

NTの自然と文化の驚異を前にすると、そのスケールと別世界のような特性に目を奪われます。謙虚な気持ちになり、信じられないような地形に吸い込まれていくのを感じずにはいられません。これらは、太古の昔から想像力をかき立て、伝統的所有者たちにとって深い文化的意味を持ち続ける、魔法の力が溢れ出てくるような場所なのです。

多くの場合、このような聖地でスピリチュアルなサイトは、何万年もの間、オーストラリアのアボリジニの生活を支えてきました。ララピンタ(Larapinta)トレイルやジャビュラ・トレイル(Jatbula Trail)を数日歩くだけで、アウトバックでの人間の生存にとって、ウォーターホールがいかに重要であるか、おわかりいただけるでしょう。オーストラリアのアボリジニの文化では、国とのつながりが重要な役割を果たしています。重要な文化的ストーリーやメッセージは地形の中に記録され、コミュニティの選ばれたメンバーによってのみ読み解かれ、世代から世代へと受け継がれていきます。

ネパールの寺院やギリシャのパルナッソス山、インドのタージ・マハルを訪れるのと同じように、その場所の深い文化的価値を理解することで、その場所の保護に貢献し、豊かな経験を持ち帰ることができるのです。

NTへの旅では、伝統的所有者の目を通してさまざまな場所を訪ね、土地の物語に耳を傾け、古くからの文化的慣習に触れました。皆さんも同じような体験をしてほしいと思います。

天地創造の物語に耳を傾ける

ウルル、ウルル=カタ・ジュタ国立公園(Uluru-Kata Tjuta National Park) 

アリススプリングスから、スチュアート・ハイウェイ(Stuart Highway)を5時間半のドライブ

ウルルは、何万年もの間、この地を占有してきたアナング族が、伝統的に所有しています。

アナング族をはじめとするオーストラリアのアボリジニの人々にとって、ウルルは、非常にスピリチュアルな意味を持ち、それは天地創造の時代から変わらないと信じられています。ジュクルパチュック・オア・パと発音)と呼ばれるこの時代は、私たちが知っているとおり、祖先が大地を移動し、世界を創り上げた時代を指します。

ジュクルパは、法律、宗教、道徳的指導を包括する複雑な信仰体系であり、アナング族の日常生活を導いています。それは書き留められるのではなく、歌、踊り、芸術、儀式を通して、世代から世代へと記憶され、受け継がれていくのです。ウルルとカタ・ジュタ周辺に見られる自然地形には、アナング族にとって強力な、チュルクルパの記憶、知恵、学びがあります。

ウルルを訪れている間、ルンカタ・ウォーク(Lungkata Walk)を完歩した私たちは、アナングの知恵に感銘を受けました。アナング族にとって、ウルルの西面は、焼き払い(今日でも行われている伝統的な土地管理手法)の際に、ウルルを発見した貪欲な青い舌のトカゲ、ルンカタ(Lungkata)を思い起こさせる場所なのです。

ルンカタは、ウルル西面の高いところにキャンプを張り、旅の疲れで空腹になったため、他のハンターから貴重な食料を盗みました。ハンターたちに食べ物を見たかと聞かれたとき、ルンカタは嘘をつき、致命的な報復を受けました。ハンターたちは、不誠実なトカゲのキャンプにつながる残飯の跡をたどり、仕返しに、彼の洞窟の下で大きな焚き火を焚いたのでした。ウルルの急斜面の黒いシミは、この焚き火の煙と灰によるものと考えられています。その煙で窒息死したルンカタは、高い洞窟から落ちて手足を失い、小さく孤独な石になりました。この物語は、ウルル登山の危険性を戒める一方で、貪欲で不誠実であることの結末を思い起こさせるものです。

この国立公園では、ウルルの生ける文化的地形について学ぶことができるルンカタ・ウォーク(Lungkata Walk)と、マラ・ウォーク(Mala Walk)を巡るレンジャーによるガイドツアーが毎日開催されています。

 

男性の仕事と女性の仕事の尊重

カタ・ジュタ、ウルル=カタ・ジュタ国立公園(Uluru-Kata Tjuta National Park)

アリススプリングスから、スチュアート・ハイウェイ(Stuart Highway)を5時間半のドライブ

砂丘展望エリアから日の出を拝みながら、私たちは、カタ・ジュタの景観に魅了されました。30以上の大きな岩の地層が、光が地形を横切っていくにつれて、深い紫色から濃厚なオレンジ色へと変化していきます。オルガ岩群とも呼ばれるカタ・ジュタは、ウルルと同じ国立公園内にあります。そのドームと渓谷は、常に砂漠の生命の源でした。

伝統的に、ここは、アナング族の男性にとって神聖な場所なのです。彼らがカタ・ジュタを訪ねる際は、ドームから離れた場所でキャンプし、ウォーターホールで泳ぐのを避け、地層の間を横切るときは静かに歩きます。これを行うのは、そのサイトにまつわる文化的な物語に敬意を表してのことです。

オーストラリアのアボリジニには、コミュニティの特定のメンバーにしか伝えられていない物語や伝統があり、男性がやる仕事女性がやる仕事についてなど、男性専用や女性専用のものもあります。こうした仕組みによって、語り継がれる物語や伝統が正しく繰り返されるようになるのです。カタ・ジュタの伝説は秘密にされており、アナング族のイニシエーションを積んだ男たちだけが知っている物語です。カタ・ジュタを訪れる際は、こうしたスピリチュアルな意味合いを念頭に置き、写真撮影に関する公園の指示に必ず従ってください。

ウルル=カタ・ジュタ国立公園内のサイトを訪ねる際は、あらかじめカルチャーセンターへ足を運ぶことをお勧めします。あなたの来訪が現地のコミュニティを支援することになり、それによって、アナング族の生活様式をより深く理解できるようになるでしょう。

旅は目的地で決まります 

ウビア、カカドゥ国立公園

ダーウィンから、アーネム・ハイウェイ(Arnhem Highway)経由で、3時間半のドライブです。

ウビアは、最高の自然に恵まれており、広大な氾濫原を見下ろす素晴らしい砂岩の崖があります。ビニン族/ムンゴイ族にとって重要な文化的サイトであることも納得できます。

古くからの活気のある集会所で、教育の中心地であったこの地域は、5万年前にさかのぼる複雑なロックアートで覆われており、この地域の生活を物語っています。オーストラリアのアボリジニにも、さまざまなグループによって話されている多くの言語があるように、さまざまな地域や人々が、独特の創作活動を行っていることがわかっています。カカドゥの人々は、レントゲン・アートとしても知られる、ラーラックスタイルの絵画で有名です。この絵画技法は、繊細なクロスハッチングパターンの、細かなラインが特徴です。  

この地域で描かれた絵画は、天地創造の時代や歴史的な出来事、近くで食べられる食べ物など、先祖代々の物語を記録したものです。現地のビニン族/ムンゴイ族の人々にとっては、最終的な結果よりも、創造的なプロセスの方が重要なことが多いのです。絵を描くという行為の中で、知識が共有され、物語が語られ、学びが生まれるからです。このことは、目的地だけでなく、旅そのものを楽しむという、誰もが恩恵を受けることができる教訓です。

カカドゥのアート遺跡は世界遺産に登録されており、伝統的所有者たちにとって非常に神聖な場所です。これらの貴重な遺跡を保護するため、見学の際は、遊歩道や標識のある道を通行し、美術品に触れたり写真を撮ったりせず、看板に注意してください。

 

国家とのつながりを形成し、育むこと

イエローウォーター・ビラボン・クルーズ、イエローウォーター(Ngurrungurrudjba)地域 

ダーウィンから、アーネム・ハイウェイ(Arnhem Highway)経由で、3時間半のドライブです。

イエローウォーター地域に位置している、このクルーズでは、カカドゥにある有名な湿原のひとつの中心を巡ります。私たちは、サンセットクルーズで、この野生生物の楽園に繰り出し、目の前に広がる自然の光景に目を奪われました。 

ガイドは、「トップエンドのDavid Attenborough」と呼ばれる、地元ビニン族の男性、Reubenさんでした。彼の民族は、6万年もの間この地域に住んでいたので、この土地について計り知れないほどの知識を持っています。Reubenは、カリスマ的な話術の持ち主なので、今までにない有益で楽しいドライブになることでしょう。

さまざまな植物や動物を見つけながら、それぞれの種の概要や、木に止まっているダーターバードが見せる動きの意味、イリエワニの縄張り意識などを教えてもらいました。この湿原は、80年代にバッファローの数が激減する前に、何千頭もの外来水牛が蹂躙した後に、復活を遂げたのだそうです。

画家が描いた暖かいピンクのパレットに、真っ先に飛び込んだかのような気分で、虹色の夕日が、旅のフィナーレを飾ってくれました。このクルーズでは、地元のビニン族の人々と土地とのゆるぎないつながりについて、素晴らしい気づきを得ることができました。そのつながりとは、すべての生き物の存在と地球上での独自の役割を尊重しようという関係性です。

 

文化についての情報は、すべてNT国立公園オーストラリア国立公園(Parks Australia)の公式ファクトシート、解説標識、ウェブサイトから入手しました。情報については、掲載前にファクトチェックを行っています。

筆者
Share this